1993.7.12
22:17
目が覚めた時にはテントの中で溺れていて
僅かに残った水の無い空間と
海水の中を浮いたり沈んだりと
ただ為す術なく繰り返していただけ
考える余裕なんてものは無くて
ただ本能のままに
身体が溺れない様にもがく
浮いた瞬間に姉の肩に必死につかまっている
飼い犬(ビーグル犬)が見えたけど
ただ見えただけ
考えたり感じたりする瞬間は無かった
“津波”の概念すら無かった私は
地震が来た事にも気が付いて居なかったし
テントの中に海水が大量に入りこんでいる理由も
寝ていただけの自分達が溺れている理由も
全くわからなかった
結果的に言えば
私達が使っていた安物ファミリーテントの
ポールが岩と岩の間に引っかかり
引き波とともに海に引きずり込まれる事無く
家族4人(犬までも)助かった
何故か父の免許証と車のキー
そして車自体も流される事も無く…
この日をわざわざ選んだ私達が不運なのか
津波に巻かれたのにも関わらず全員助かった事が幸運なのか…
なんとも言えない日になる